MESSAGE │ ROOM-社長の論説-
2019.10.18
ROOM -社長の論説-
「JFL」の二つの顔。

いわきFCが掲げる今年の目標は、東北社会人1部リーグで優勝し、全国地域チャンピオンズリーグで上位に入って、JFL(日本フットボールリーグ)に昇格することだ。
今回はわれわれが目標とする、JFLという舞台について考えてみたい。
実はJFLというリーグは、世界的に見て非常に珍しい存在である。理由は、その複雑な構成にある。JFLで戦うチームは大きく分けて3種類。将来のJリーグ参入を目指すプロ(セミプロ)チームと、そして企業のサッカー部を母体とする実業団チーム、大学のサッカー部が混ざり合って戦うリーグなのだ。
その中で、例えばFC今治や東京武蔵野シティFCはすでに「Jリーグ百年構想クラブ」に認定され、JFLでの上位進出そしてJ3昇格を目指している。それに対しHonda FCやソニー仙台FC、流通経済大学ドラゴンズ龍ケ崎などに、Jリーグへの参加意志はない。彼らの目標はあくまで、JFLでの優勝だ。
つまりJFLには「J3への登竜門」と「アマチュアクラブの最高峰リーグ」という二つの顔がある、ということだ。
ヨーロッパや南米では、1部リーグから2部、3部とカテゴリーを下げていくと、若い選手が増え、スキルは劣るもののプレーはどんどん激しくなる。ある意味、サッカーの本質に近づいていく。仕事をしながらプレーする選手も多いが、皆が昇格を目指し、闘争心むき出しで戦う。そこには、1部リーグを頂点とした明確なピラミッド構造がある。
それに対して日本はどうだろう。J1を頂点とする日本のサッカーリーグの構造は、少々いびつだ。
J1からJ3までのプロリーグで、最も激しいプレーが展開されるのはおそらくJ1だろう。下のカテゴリーでは、かつてJ1でプレーしていた経験豊富なベテランが円熟味のあるプレーを見せることはあるが、試合のテンポはややスローダウンする。正直、下のカテゴリーに行くほど、サッカーの本質ともいえる激しいプレーは減る印象がある。
そしてJFLはJ3の下に位置づけられているが、実際のレベルはほぼ同等。しかし、そこにはJリーグ参入を目指すプロ(セミプロ)チームと、Jリーグ参入を目指さない実業団や大学のサッカー部が混在し、チームによってリーグ戦を戦う理由と目標が異なる。
いわきFCは将来のJリーグ入りを視野に入れている。だからJFLに昇格したら、Jリーグ入りを目的としない実業団クラブや大学のサッカー部と戦いながら、J3を目指すことになる。だが、従業員の福利厚生のために作られた企業のサッカー部や大学のサッカー部と、震災をきっかけに生まれ、スポーツによる社会価値の創造と地域貢献を目指すいわきFCとは、バックボーンも社会におけるあり方もまったく異なるはずだ。
明確なヒエラルキーのもと、同じ志を持ったチームが集まり、切磋琢磨しながら上のカテゴリーを目指す。それがリーグ本来の姿だと思う。そしてJFLは将来「Jリーグ入りを目指さぬアマチュアクラブの最高峰リーグ」と定義されるべきではないだろうか。
昇格を目指す戦いが迫る中、ふと、そんなことを考えてしまった。