スポーツ庁委託事業「スポーツコンプレックス推進事業」完了のご報告 〜試合日の地域回遊実証事業により、スポーツを起点にしたまち全体の回遊モデルの可能性を定量的に検証〜
このたび、株式会社いわきスポーツクラブは、スポーツ庁より委託を受けた令和7年度「スポーツコンプレックス推進事業(まちづくり連携支援事業)」が完了いたしましたので、お知らせします。
本事業の実証イベントにご参加いただいたファン・サポーターの皆さま、実施にご協力いただいた地域の事業者・関係団体の皆さま、そしてスポーツ庁をはじめとする行政関係者の皆さまに、心より感謝申し上げます。
事業の背景と経緯
いわきFCは、新スタジアム「IWAKI STADIUM LABO(仮称)」の実現に向け、2023年度から3年連続でスポーツ庁の委託事業に採択されてまいりました。
令和5・6年度は主に計画策定・コンセプトメイキングを進め、令和7年度はいよいよ実証フェーズへと移行しました。
本年度は、いわき市や地域の経済団体等が参画する地域協議会「スポーツによる人・まちづくり推進協議会」を軸とした官民連携の枠組みのもと、地域の関係者・事業者・サポーターの皆さまと対話を重ねながら、3つの主要な取り組みを実施しました。
① ワークショップの開催
「スポーツによる人・まちづくり推進協議会」の構成員(行政・経済団体・観光団体等の地域関係者)を対象に実施。延べ103件の意見(課題・アイデア)を収集し、実証の方向性・仮説・設計を議論・合意しました。
② 概念スケッチの策定
ワークショップでの議論を踏まえ、スタジアムを核としたスポーツコンプレックスの将来像「いわきスポーツコンプレックス構想(β版)〜スポーツを起点にしたまち全体の回遊モデル〜」を「概念スケッチ」として可視化しました。
③ 回遊型シャトルバス実証事業
3月7日(土)に開催された明治安田J2・J3百年構想リーグ 地域リーグラウンド EAST-B 第5節 RB大宮アルディージャ戦では、スタジアム(ハワイアンズスタジアムいわき)を起点としたいわき市内の温泉・商業施設・観光スポットをめぐる回遊型シャトルバス「いわきFC 周湯〜バス」を試験運行しました。
延べ387名にご利用いただき、乗車者を対象としたアンケート(有効回答:94名)により、来場者の行動変容・消費行動・満足度を定量的に検証しました。


実証結果のハイライト
以下の数値はバス利用者(延べ387名)を対象とした任意回答アンケート(有効回答数94件)に基づく結果です。
回答者は積極的に利用した方に偏っており、全来場者(3,877名)を代表する統計値ではありません。事業効果の参考値としてご覧ください。
実証結果1
いわきFCを応援する地元ファン53名(いわきFCファンクラブ会員39名・未加入14名)の「普段の回遊率」と「実証当日の回遊率」を比較した結果、普段26.4%だった回遊率が、実証当日は83.0%(+56.6ポイント)に急増しました。試合への来場が、まち全体を楽しむきっかけになることが数字として示されました。
実証結果2
「回遊型シャトルバスがなかった場合、今日バスで訪れた場所に行っていたと思いますか?」という問いに、回答者の66.0%(62名)が「行かなかったと思う」と回答しました。バスの運行が、これまで生まれなかった新しい回遊行動そのものを創出したことが確認されました。
実証結果3
普段は試合前後にスタジアム・自宅・駐車場の往復のみで街に出ない「非回遊者」53名が、実証当日に地域内で消費した金額の合計は約132,500円。これは回答者全体の消費額(約242,000円)の54.8%を占めました。これまで地域経済とのつながりが薄かった層が、バスの存在によって消費者として地域に加わったことを示しています。
実証結果4
回答者全体のスタジアム外での平均滞在時間は、普段の68.0分から実証当日は98.6分へ、+45.1%延長されました。スタジアムを核とした回遊体験が、来場者一人ひとりのまちとの関わり時間を大きく広げることが確認されました。
実証結果5
満足度90.4%(85/94名)・再利用意向87.2%(82/94名)と、利用者からきわめて高い評価が得られました。自由記述の有意回答90件のうち約70%(63件)にポジティブな内容が含まれており、純粋な不満のみを記述したネガティブ回答は極少でした。残りの多くは「便数を増やしてほしい」「案内を充実させてほしい」といった建設的な改善要望であり、利用者の関心の高さがうかがえます。
自由記述
また、自由記述には交流体験に関する記述もございました。
「アウェイサポーターと一緒に乗れ、いい関係が作れた」
(いわきFCサポーター/男性/普段の試合は自宅とスタジアムの往復が習慣/実証日は湯本温泉街のバス停を利用)
「いわきの人はみんな優しかった」
(RB大宮アルディージャサポーター/女性/ハワスタ観戦は初めて)
「いわきFCサポーターやスタッフの方々に色々と親切に教えていただき、助かりました」
(RB大宮アルディージャサポーター/女性/道の駅や湯本温泉街のバス停を利用)
こうした声は、回遊型シャトルバスが単なる移動手段にとどまらず、ホームとアウェイのサポーターが同じ空間を共有するという、スポーツを介した地域間交流の場として機能した可能性を示唆している。規模拡大や継続運行を通じて、この「交流の場としての機能」をさらに育てていくことが、スポーツコンプレックスの価値向上につながると考えております。
改善点・今後の課題
ご参加・ご回答いただいた皆さまからいただいた貴重なご意見の中には、今後の取り組みに向けた課題も多く含まれておりました。主なご意見として、以下の点が挙げられました。
①バスの本数・時間帯の充実:
「もっと本数を増やしてほしい」「試合後の便が少ない」
②行き先・ルートの拡充:
「もっと多くのスポットをまわりたい」
③事前の情報発信強化:
「もっと早く告知してほしかった」「バス停の案内がわかりにくかった」「バスに乗ることができなかった」
④継続的な実施への期待:
「ぜひ次のシーズンも続けてほしい」
これらのご意見や運営上の課題点はすべてクラブとして真摯に受け止めており、次回以降の実証・本格展開に向けた改善事項として取り組んでまいります。
ご参加・ご回答いただいた皆さまのお声が、いわきの未来を形づくる貴重なご意見となっています。
概念スケッチ
本事業の検討プロセスを通じて策定した「いわきスポーツコンプレックス構想(β版)〜スポーツを起点にしたまち全体の回遊モデル〜」を公表いたします。
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本スケッチは、1日の時間の流れ(朝→昼→夕→夜)を円環状に配置した構図で、スタジアムを起点・終点としてまち全体の回遊動線を可視化したものです。
温泉・食・自然との出会い、地域住民とアウェイサポーターの交流、そして今回の実証にあたる回遊型シャトルバスによる観光拠点との接続など、スポーツ観戦を起点とした「まちの1日」が描かれています。
本スケッチは確定的な設計図や都市計画ではなく、地域関係者との議論を重ねながら描いた将来へのビジョンイメージです。今後の新スタジアム整備構想「IWAKI STADIUM LABO(仮称)」の検討における出発点として位置付けています。
経済効果試算(参考):新スタジアム展開を想定した場合
「IWAKI STADIUM LABO(仮称)」の整備候補地はいわき市小名浜港の区域に位置しており、立地特性上、来場者の駐車場台数に現実的な制約が生じることは避けがたく、この課題構造は現在のハワイアンズスタジアムいわきが抱える交通アクセス上の制約と本質的に共通しています。
いわき市も同エリアを対象とした調査事業(令和7年度「小名浜港周辺のエリア価値向上に向けた可能性調査事業」)において「駐車場不足・交通渋滞」「車以外での来場手段の確保」を公式な検討課題として明示しており、本実証で取り組んだ回遊型シャトルバスは市の政策方向とも整合するものと考えております。
こうした背景を踏まえ、本実証データ(n=94)をもとに、新スタジアム建設後に回遊型シャトルバスを継続・展開した場合の経済波及効果を簡易的に推計しました。(平均来場者数7,000人/試合・年21試合と仮定し、バスの利用率は3シナリオを設定)。その結果、現状のバス利用率10%を維持するシナリオでもバス利用者による年間新規消費は約2,100万円、利用率30%の高普及シナリオでは年間約6,200万円が見込まれることがわかりました。
| 利用率10% (700人/1試合) 現状維持シナリオ | 利用率20% (1,400人/1試合) 積極展開シナリオ | 利用率30% (2,100人/1試合) 高普及シナリオ | |
| 新たに回遊する地元ファン数 | 年間:約4,700人 | 年間:約9,400人 | 年間:約14,100人 |
| バスにより新たに回遊した人数 | 年間:約9,700人 | 年間:約19,400人 | 年間:約29,100人 |
| バスによる新規消費額(回遊者の消費推計) | 年間:約2,100万円 | 年間:約4,100万円 | 年間:約6,200万円 |
| 街での追加滞在時間 | 年間:約7,600時間 | 年間:約15,200時間 | 年間:約22,800時間 |
| 満足・再利用意向者数 | 年間(満足): 約13,200人 年間(再利用): 約12,800人 | 年間(満足): 約26,600人 年間(再利用): 約25,600人 | 年間(満足): 約39,900人 年間(再利用): 約38,500人 |
※本試算は1試合限定の実証実験(乗降者数387人/アンケート回答数94件)に基づく簡易推計であり、統計的に精度を保証した数値ではないことに留意ください。また、本アンケートはバス利用者のみを対象としており、積極的な利用意向を持つ層が回答者に偏っている可能性があります。事業効果の概算・参考値としてご解釈ください。実際の効果は、スタジアムの立地・アクセス設計・来場者属性・周辺商業施設の充実度等によって大きく変動しうると考えます。
今後の展望
今回の実証は単発・小規模な取り組みではありますが、スポーツを核とした地域回遊・消費創出・滞在時間延長という効果が数値として示されたことは、今後の新スタジアム計画を後押しする重要な初期検証結果となりました。
新スタジアム「IWAKI STADIUM LABO(仮称)」が完成し、現在のハワイアンズスタジアムいわきでのホームゲーム時よりさらに多くの来場者数が実現した際には、本実証で得られた知見をもとに、より大きな経済効果と地域活性化が期待されます。
スポーツ庁が推進するスポーツコンプレックスの実現に向けて、いわきFCは「スポーツが地域をつなぐ都市装置」としてのスタジアムの可能性を追求し続けてまいります。サポーターの皆さまの変わらぬご支援・ご声援を、何卒よろしくお願い申し上げます。
コメント
株式会社いわきスポーツクラブ 代表取締役 大倉 智
「スタジアムを建てることは手段であり、いわきという地域にあふれんばかりのにぎわいを生み出すことが目的です。今回の実証を通じて、スポーツが人・場所・経済をつなぐ可能性を改めて確信しました。サポーターの皆さまのご協力と忌憚なきご意見が、私たちの取り組みを前に進める力となっています。これからも皆さまとともに、いわきの未来をつくってまいります」
スポーツ庁さま
「いわきFC様の取り組みは、スポーツを核としたまちづくりの先進的な実践例として、全国のスポーツコンプレックス推進に向けた重要な参考事例となるものです。新スタジアム建設にあたっては、交通インフラ等利便性の向上や、エンタメ・ビジジスス等スポーツ興行以外との接続、飲食や宿泊など周辺エリアとの連携など、スポーツコンプレックスの実現に向けた取り組みを期待しております」
本事業の支援体制
本事業は、スポーツを通じたまちづくりを専門とするユマニタス株式会社(代表取締役:中島啓太)との連携のもとで推進しました。いわきFCの新スタジアム構想を核とした地域活性化・官民連携事業の企画・推進支援において、本事業完了をもって約2年間の伴走支援実績となります。


